これからは裸眼で快適に生活ブログ:21-6-18
あれはオレが小学3年生の秋、
窓を閉めて寝る季節のことだった…
お母さんは18時9時から10時の間に自分の部屋にこもり、
「決して襖を開けてはいけない」と言った。
オレはそれに従った。
だけど、それにしても、
一体、お母さんは何をしているのか?
なぜオレは見てはいけないのか?
何か秘密でもあるの?…
そのうちだんだん妙な疑惑と不安がのしかかってきた。
もしかして、
お母さんは「鶴の恩返し」に出てくる鶴ではないか?
隠れて織物を織っているのではないか?
実は「雪女」で、襖を開けたら、
真っ白の風にくるまれ、消えていくのではないか?
オレは、そんな化け物から生まれたのか?
怖いやん…めちゃ怖くて、泣きそうやん…
こんな秘密を持つなんて、
きっとお母さんはオレが嫌いなんだ、
実の女の子じゃないからだ。
オレはなんてかわいそうな女の子だ。
…泣きたくなって、襖を開けてしまった。
すると、お母さんはなんと腹筋運動の真っ最中!
「こら、開けたらあかんて言うたやん」
もうすぐ運動会で、
お母さんは、競争に勝つために特訓中なのだった。
「あんたがおったら集中でけへんから、ひとりでやりたかったのに〜、
もうええわ。やめよっ!」
と、食卓に来てお茶を飲んだ。
そこで、べたべたとくっつく、
しけたしょうゆのあられを一つずつ5本の指先につけ、
指をなめずに食べた…
これ、お母さんとオレのお気に入りの食べ方。
「いつものことやけど、こうして食べたら、おいしいなぁ〜」
と笑うお母さん。
で、オレは5本の指を寄せて、
5つのおかきを同時にくちに入れるという技を極め、
お母さんの絶賛と大笑いを得たのだった。
こんなことで絶賛してくれるのは実の両親以外あり得ない。
間違いなくオレはお母さんの子供だ!
すごく嬉しくて、そして、涙がとてもしょっぱかった。